便秘、その3

慢性機能性便秘に対する治療も他の生活習慣病と同じく、腸管の機能を調節し自然な排便リズムを獲得できるよう適切な生活改善を行った上で、便秘だから下剤を投与という短絡的な考え方は誤りです。個々の病態を把握し種々の因子を念頭に置き薬物療法を取り入れることが重要となります。下剤の選択は、それぞれの下剤の特徴を把握し、その病態や特徴に応じての使い分けが必要となります。効果がないからといって、ただ量を増やすのではなく、異なった作用機序の下剤に変更するほうが効果的なこともあります。また、浣腸によって排便を促すこともできますが、浣腸は正常な腸反射の回復を妨げるので、常用するのではなく宿便にたいする一時的な処置として使用するべきものです。使用する機会の多い便秘治療薬をあげてみました。

1)膨張性下剤

代表的な薬剤:カルメロースナトリウム(バルコーゼ)

親水性のカルメロースナトリウムは十分な水分とともに服用すると腸内で粘性のコロイド液となり、硬化した便塊に浸透して便の容積を増大させ、便を軟化させます。結果、適度な硬さと太さの便が無理なく排泄されることになります。欠点は、服用しにくいことや、効果が緩やかで効いた感じがしないなどの理由であまり好まれず、服薬の継続が不良となる場合があることです。無効例も少なくなく、本剤にのみ固執する必要はありません。膨張性が高いため、悪心や膨満感などの副作用も多く報告され、注意が必要です。

2)塩類下剤

代表的薬剤:酸化マグネシウム(マグラックス)

腸管内で水分の再吸収を抑制することによって、腸内容(便)は膨張・軟化し、その刺激により便意を促す効果があります。膨張性下剤と比べると、より確実な効果が期待でき、連用に際しての安全性も比較的高く、習慣性も少ないと考えられています。そのため、軽症~中等症の慢性便秘例での長期投与に適した薬剤です。しかし、マグネシウムは重度な腎障害では排泄が抑制され高マグネシウム血症、心機能障害では徐脈を誘発する可能性があり注意が必要です。使用者の一割程度に血中マグネシウム濃度の上昇が認められたとの報告もありますが、あまり問題はないと考えられています。最近は、錠剤の製剤が発売され、味や服用感が改善され、服用しやすくなりました。

3)刺激性下剤

代表的薬剤:センノシド(センナリド、シンラック)

刺激性下剤は大腸粘膜およびアウエルバッハ神経叢に作用し、大腸蠕動運動を亢進させ、水分吸収を抑制することにより排便を促します。一般的に効果が顕著で、市販品としても入手可能なため、多くの便秘患者に用いられていますが、本来使用対象を限定すべき薬剤です。薬効に関する耐性と習慣性は数ある下剤の中でも高く、長期の常用により必要量が増えていってしまいます。また、腹痛や悪心などの副作用も多く、濫用を避け、必要時のみ随時用いるようにすれば、有用性が期待できる薬剤です。

4)その他(糖類下剤など)

糖類下剤であるラクツロースは本来肝疾患治療薬ですが、下痢を生じる副作用が便秘の治療に用いられることがあります。内服後無変化のまま大腸に達し浸透圧作用で効果を示します。また、腸内分解で発生した有機酸により腸蠕動運動が亢進し排便を促します。消化管運動亢進薬もいくつか知られています。これらの薬剤はセロトニン3、4受容体、モチリン受容体へ作用し、腸管運動を亢進させる効果を有しています。クエン酸モサプリド(ガスモチン)、大建中湯、マクロライド系抗生物質のエリスロマイシンなどがあげられます。

主だった便秘治療薬を紹介しました。使用された方も多いかと思われます。馴染みのある薬剤ですが、使用にあたっては注意が必要となる場合もあります。それぞれの薬剤の特徴を捉え、有効かつ安全に使用するうえでも、便秘にはいきなり薬物治療を行うのではなく、適切な手順を踏むことが大切です。また、慢性の便秘に対して刺激性下剤が濫用されている現状を認識し、常用するのであればより安全性の高い治療薬を選択することが重要と言えます。

薬局 K.S