便秘の治療
便秘は排便回数、1回排便量の減少、便の硬便化などによる排便困難、残便感、腹痛などの不快な症状を訴える状態です。回数としては3日に1回以下の便通が一つの尺度とされますが、こうでなければいけないという医学的に定義されるものではないそうです。便通が3~4日に1回でも硬さが普通で、排便に困難を感じなければ便秘とはいわないそうです。また、便秘の意識には個人差があり、同じような便通であっても、ある人は便秘と捉え、ある人は普通と感じることもあるようです。なので、排便回数の減少に何か不快な症状が伴う場合、便秘を訴えます。そこで、便秘の診断をする上で、その性状や程度を把握することが重要だそうです。便秘の治療にはそれなりの手順があり、薬物療法を開始する前にやらなければいけないことが色々あります。全ての疾患に共通することとして、先ず緊急性があるのか、重症かどうかを的確の把握する必要があります。腸閉塞などの恐れがあれば手際よい治療が必要ですし、便秘を誘発している原因を探ることが必要になってきます。便秘の原因となる基礎疾患として、腸管の器質的疾患と全身性疾患が挙げられます。最近では便通に変化があり、腹痛や血便などの随伴症状が認められる場合は、大腸癌を念頭においた検査を行ったりします。糖尿病、甲状腺機能低下症、電解質異常などの全身性疾患でも便秘が生じてくることがあります。これらを除外するために基本的な検査を行っておくことも重要です。また、忘れてはいけないのが治療薬の副作用としての便秘です。高齢者においては何らかの薬剤を服用していることが通例で、便秘が薬剤に起因していることが少なくありません。循環器薬、向精神薬、鎮痛薬などが挙げられます。服薬歴を確認して治療薬の変更等を図ることが便秘治療の最初となる場合もあります。幸い原因となる基礎疾患があることはそんなに多くなく、慢性的な機能性便秘のことがほとんどのようです。
◆ 腸管の運動機能低下や過剰緊張で起こる 「機能性便秘」
◆ 腸管そのものに問題があることで起こる 「器質性便秘」
◆ 他の疾患が原因で、その付随症状として起こる 「症候性便秘」
◆ 治療のために用いられた薬剤によって引き起こされる 「薬剤性便秘」
便秘の原因となる主な薬剤 便秘を起こす主な作用
●麻薬系の鎮痛薬(モルヒネ)、鎮咳 腸の蠕動運動を抑制する
薬(コデインリン酸塩水和物)など
●抗コリン薬(気管支拡張薬、鎮痛薬
など)、抗ヒスタミン薬、向精神病 消化管の緊張を低下
薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬
抗不整脈薬
●降圧薬(Ca拮抗薬) 消化管運動を低下
●制酸薬、鉄剤、収れん薬(ビスマス 収れん作用(皮膚や粘膜のタンパク質と
製剤)など 結合して、保護膜を作る作用。粘膜への
. 刺激が弱まり、腸の蠕動運動を抑える)
便秘治療(非薬物療法)
便秘の治療で最も効果的なのは薬物療法です。しかし慢性の機能性便秘の場合には、排便習慣の改善などの生活指導や食事療法などの非薬物療法も決して疎かにすべきではありません。高血圧、糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病でも同じことが言えますが、治療効果に優れた良い薬は沢山あります。しかし、薬物療法に全てを頼るのではなく、生活習慣の見直しを念頭に置くことで、薬の治療効果を最大限に引き出すと共に、出来るだけ少量の服薬で効果を引き出すことに繋がるのではないでしょうか。治療の対象の疾患によっては、薬の使用量を必要最小限に抑えることが重要な場合が多くあるように考えます。薬の効果がいまいちと考え量を増やしてもらうか。不具合の改善が期待できる他の対処方法を取り入れて改善を図るかは人それぞれですが、私は、可能であれば少ない量の薬で済ませたいと思っています。
1)便秘治療における生活指導の要点
生活習慣改善の要点 期待される効果
排便習慣の確立 → → 周期的便意の習慣
便意を逃さない → → 直腸・結腸反射機能の改善
適切な運動 → → 腸管血液循環改善、大腸運動亢進、腹筋の強化
ストレス発散 → → 自律神経系の改善
便意習慣の確立
便意の有無に関わらず、毎日一定の時間(できれば朝食後)排便の努力をすることが勧められます。便秘が女性に多いことが知られていますが、女性ホルモンが関与しているほかに、幼少期からの排便習慣が形成されていないことも一因と指摘されています。一般的には、起床時に腸管運動が亢進して便通を得やすい状況となり、朝食摂取により腸蠕動運動はさらに亢進します。毎朝の規則的な排便習慣により便意の起こるリズムが形成され、便秘改善につながります。朝の時間帯での習慣付けが無理であれば、昼食後または夕食後も腸管運動が活発となるので、この時間帯で排便できる時間の確保に努めましょう。
便意を逃さない
便意があったらそれを逃さないことも大切です。排便したいときに我慢を繰り返していると、直腸・結腸反射機能が鈍化し便意低下につながります。自律神経の機能低下により便意を感じにくくなることによって腸の運動自体も弱まり、便秘が常習化していきます。排便は決して恥ずかしい行為ではなく、高度の便秘のほうがよほど恥ずかしいことであると意識しましょう。日常の定期的な便意を逃さないことが必要です。
適切な運動
便秘に立ち向かうためには、適切な運動が大切です。運動により血液循環が改善され、腸管運動が活発になります。また便の排出に必要な腹筋の強化も期待できます。病棟が改築され患者さんの動線が伸びたことが、下剤の使用量減少に繋がった要因の一つと考えられることを過去に経験しています。
ストレス発散
便秘の原因として心理的葛藤が存在することが知られています。腸管の蠕動運動は交感神経・副交感神経のバランスにより保たれているので、精神的ストレスが積み重なって自律神経の機能に乱れが生じ、正常な排便習慣が乱されます。また、便秘を気にしすぎることがかえってストレスになる場合もあり、気長に構える柔軟さも必要となってきます。
慢性便秘患者では食生活に問題があること少なくありません。
2) 便秘治療のおける食事療法要点
食事療法の要点 期待される効果
規則正しい食事 → → 周期的便意の習慣
十分な水分の摂取 → → 便の軟化、排便の容易化
食物繊維の摂取 → → 便量の増大、排便の促進
ビフィズス菌の摂取 → → 有機酸生産による腸管蠕動運動の促進
オリゴ糖の摂取 → → ビフィズス菌増殖促進(腸内細菌叢改善)
規則正しい食事
第一に規則正しい食事により、周期的な便意と排便習慣をつけさせるようにしましょう。毎日の朝食摂取で腸管蠕動運動を亢進させることが、周期的便意の習得の上で重要です。
十分な水分の摂取
水分の摂取が少量ですと、腸管での水分の吸収により便が硬くなり、便意が生じにくく排便も困難となります。1日2L以上の水分摂取で便通の改善効果が得られるとの報告もあります。しかし、人によっては水分の過剰摂取が他の体調不良の引き金になることもありますので気を付けてください。
食物繊維の摂取
食物繊維の摂取は便秘に対する食事療法の基本です。吸収されず腸管内に残る食物繊維は、水分を吸収して糞便を形成します。繊維分が多いほど水分を吸収しやすく、便が柔らかくなり便量も増大し、円滑な排便が可能となります。効果を得るには1日量25~30gの食物繊維が必要とされ、多量の果物や野菜を摂取することが推奨されています。高繊維食は便秘の診断的治療の第一歩とも考えられ、これに反応しない場合に限り精査をすればよいという意見もあるそうです。
ビフィズス菌の摂取
人間の腸内には約100種類、100兆個もの菌が住んでいるそうです。これらの菌の中には健康に害を与える有害菌もあれば、健康のためによい働きをする有効菌が存在します。各種腸疾患における腸内細菌叢への薬物介入による治療が近年注目されており、有害菌には抗生物質が必要ですが、有用菌を増やす食品も注目を浴びています。有用菌の代表がビフィズス菌で、その増殖に伴う代謝産物としての有機酸が腸の蠕動運動を促進させます。そのためビフィズス菌を摂取することにより便秘の改善が期待できます。
オリゴ糖の摂取
ビフィズス菌の増殖を促進するオリゴ糖の摂取も有用と考えられます。ビフィズス菌のエサのような物でしょうか。しかし、ビフィズス菌に関する効果は科学的に検証されているわけではないようです。
便秘を改善するために薬物療法は最大の効果が期待できる治療法です。しかし、便秘というものを知り、日常的に取り入れられる非薬物量は薬物療法をより効果的にするためにも疎かにできないものです。便秘の非薬物療法を取り上げました。次は、便秘に用いられる薬物の種類や、どのような状況でどの薬が選ばれるのかを簡単に紹介したいと思っています。
参考書籍 便秘の薬物療法
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