便秘のお話1

日頃、患者さんに処方されている薬の中に下剤が多く含まれています。何で下剤が必要になるのか。そこらへんを知るためにお浚いしました。

便秘とは何らかの原因で排便に困難を感じる状態を指します。しかし、排便習慣は個人差が大きく、一概に回数で定義することはできません。排便回数が少ないだけでなく、排便量が少ない、残便感や便が硬いための苦痛、腹部膨満感なども便秘と認識されます。便秘の多くは、慢性に経過しますが、急性に発症することもあり、なかには早急な対応を要するものもあります。症状の経過、便の性状、頻度、腹痛、悪心・嘔吐の有無、基礎疾患の有無や投薬歴などを確認して鑑別診断が行われます。

排便の仕組み

ヒトでは便塊は左側結腸に多くためられ、直腸内は通常空虚な状態にあり、S字結腸境界部の輪状筋が収縮していることで便塊の通過を妨げています。胃結腸反射により結腸運動の促進や大蠕動の出現により、便塊は直腸内に移送されます。便塊により直腸が伸展されると、求心刺激が直腸→骨盤神経→仙骨→視床を経由、大脳皮質の知覚領域に達し便意を知覚します。そして、排便可能な状況が整うまで便塊を保持するための随意的機構が働きます。直腸は伸展性に富む貯蔵庫として働き、内、外肛門括約筋による肛門管閉鎖、外肛門括約筋による反射性収縮と随意収縮が加わって排便自制が強化されます。一方、便塊による伸展刺激は直腸→骨盤神経、肛門管→陰部神経を介して排便反射を誘発、排便中枢を反射的に興奮させ、骨盤神経、陰部神経の遠心路の活動が亢進し、直腸の収縮運動が高められ、排便が引き起こされます。大脳中枢により随意的に排便動作に入ると、呼吸は吸気位で一時停止、声門を閉じ、胸筋を収縮して胸腔内圧を高め横隔膜を低下させる。さらに、腹筋収縮が加わり胸腔内圧が高まって“いきみ”を起こす。骨盤底筋群は弛緩して骨盤底が下降し直腸が下に引き伸ばされ漏斗状になる。この時、肛門管はまだ閉鎖していますが、直腸内圧の上昇と排便反射により直腸の縦走筋と輪状筋が強く収縮し、内肛門括約筋が反射性弛緩に転じ肛門管が開き、便塊が排泄されます。次の瞬間、反射的に肛門挙筋が収縮して肛門の下端が引き上げられ、直腸の体外への翻転を防ぎます。このような段階を経て排便は終了します。排便反射時には直腸だけでなく、遠位結腸も運動も亢進し、1回の排便でこの部分の便塊も排泄されます。このように神経を介して刺激の伝達、調節機構が働き排便は調節されているため、腰・仙髄より高位で脊髄遮断が起これば、排便の反射性機構のみが残り、意思とは無関係な排便をきたしたり、仙髄の排便中枢が障害されると排便反射の消失、外肛門括約筋の弛緩による大腸失禁を招いたりします。また、便意を抑え続けると、圧受容器の感受性が低下して便意が起こりにくくなり便秘の一因となります。

便秘の分類

便秘は大きく分けて3種類に分類されます。

輸送時間正常型

日常最も多くみられるタイプの便秘で、排便の頻度は正常のこともありますが、便が硬いなどのために排便に困難を感じ、腹満感や腹痛を伴う場合は過敏性腸症候群と診断される例もあります。

排泄障害型

このタイプの多くは骨盤底および肛門括約筋の機能障害が原因で、排便時に腹筋と直腸肛門筋、骨盤底筋の協調運動がうまくいかず、直腸内の便塊が効果的に排泄できなくなると考えられています。

輸送遅延型

若年女性に多いタイプで、思春期頃に症状が出現して、排便頻度は普通1週間に一回以下です。胃結腸反射の低下により食後の近位から遠位結腸への輸送遅延が起きていると考えられています。

生理現象としての排便は、生態の恒常性を保つための非常に重要の機能のうちのひとつです。無意識のうちにとても巧妙に調節された機能です。器質的なものは除き、生活習慣、ストレスなどの精神的要因、常用している薬などによってもその調節機能が影響を受け不具合が生じます。正常な排便がどのようにして促がされるのかを知ると、不調をきたしたときの原因も探れるような気がします。先ずは、排便の仕組みをおおまかに紹介しました。一度にいろいろ知りたい方はそれなりの参考書を読んで頂くこととして、今日はたったこれだけですいません。排泄に影響する日常の習慣や、治療薬、精神科に特化した便秘など等、少しずつお浚いがてら紹介していければと思っています。

薬局 K.S