ますます繁盛

日本の正月と言えば、餅(もち)とミカンですね。

皆さんの家では餅はどうしていますか。

昔はたいてい自宅でついていたのですが、

最近は買って食べるという人が多いのではないでしょうか。

私は自宅でつきます。

毎年、30日の早朝からの餅つきが恒例になっています。

今年もそろそろ臼と杵の準備をする時期になってきました。

餅つきの米を蒸かす時は、餅米を「枡(ます)」という

木製で箱のような計量器で図ります。

きょうはこの枡についての話です。

枡は昔から使われてきました。

現在使われている枡は「京枡」といって、織田信長が公に定め、

江戸幕府も継承し、年月を重ねて今日まで使われています。

一方でわが山梨には武田信玄が定めた「甲州枡」がありました。

京枡の3倍の大きさです。

江戸時代には、甲州枡を認めるよう幕府に嘆願したという

記録もあるそうです。

おそらく、武田氏が幕府を開いていたらこの「甲州枡」が

現在も日本の標準枡になっていたと思います。

この枡で年貢の計算もされました。

悪徳庄屋は少し大きめの枡で年貢を徴収していたそうです。

逆に悪徳米屋は少し小さめの枡で米を売っていたそうです。

枡の歴史を紐解くと人間の知恵、狡さ、苦悩が透けて見えます。

ちなみに、枡の字から木を除くと升(しょう)となりますが、

量の単位になります。

京枡(新京枡)1升は約1.8リットル、

米重量で約1.5kgとなります。

餅をつくときは、

1回につき甲州枡で一つ分(京枡3升)というのが多いようです。

さらに、ちなみに、

日本酒を飲むための「酒枡」というのがありますが、

これは木の香りを楽しむ器で計量器とはちょっと違います。

升の中にグラスを置いて、

溢れるまでなみなみとつぐことを「もっきり」と言います。

「盛り切り」が由来で「たくさん飲んで欲しい」ということです。

この升酒には飲み方のルールがあり、

とがった角の部分に口をつけるのではなく、

平らな部分から酒を飲むのが正しい作法です。

最後に、1升の半分を5合といいます。

5合は2分の1升に当たるため、

「二升五合」を「ますますはんじょう(益々繁盛)」と読んで

縁起物などに書かれています。

しばしば、湯飲みなどに「春夏 二升五合 冬」と書いてあります。

「商い(秋無い)益々繁盛」ということです。

正月、こたつで御雑煮を食べながら枡のことを考えてください。

貴方は、大きい枡を使う庄屋がいいですか、

小さい枡を使う米屋がいいですか、

銘酒を酒枡でちびりちびり飲む「のんべえ」がいいですか。

来年が枡枡(ますます)よい年でありますように!